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FARM CANNING 西村千恵さん

もったいない野菜を美味しく変身させる

規格外などで廃棄されがちな野菜を瓶詰めにして販売している「ファームキャニング」代表の
西村千恵さんにお話を伺いました。

オーガニックに触れて改めて知った食の大切さ

西村さんの生まれは東京世田谷で、子育てを機に6年ほど前に葉山に移住。サラリーマンには向いていないと学生の頃から思っていた西村さんは、いろんな経験を積み重ねるべく、料理好きを活かしてケータリングを始めてみたところ自分に合っていると感じたそう。ある時、オーガニックカフェを開きたいという女性に出会い、彼女と共同でカフェを立ち上げることに。食と健康の繋がりがコンセプトのお店で、西村さんはレシピ開発はもちろん、店舗内装からスタッフの育成まで何でも行っていました。そんな中で西村さんは食との関わり方をこれまでより深く考えるようになったのです。
カフェ立ち上げ後、二人目が生まれ子育てを中心にシフトしていこうと考えた時、食育に繋がればと都内で貸農園を借りようと考えていたところ、お兄さんが葉山でヨットをしていたこともあり三浦半島によく遊びに来ていたため、自然の多い三浦半島で住むことも考えるようになったそうです。 以前から都会からそう遠くない場所で、自然の中でのびのびと子育てをしたいという強い思いがあり、思い切って移住してみると、コミュニティーの大きさがちょうど良くネットワークが強いことや、同じように移住してきた人も多かったこともあり、住みやすさを実感します。自然が多くこの土地ならではの魅力もあり、今ではもう戻れないと西村さんは話します。

葉山での自然の恵みをダイレクトに感じる暮らしに魅了され続け、FARM CANNINGを設立

一方で、葉山に移住して不思議に感じたことが、地元の野菜をスーパーであまり見かけないこと。近くには自然が多いのに、「地元の野菜はどこで買えるのだろう」と思っていたところ、ある時、知り合いが横須賀・葉山に広がる湘南国際村の「めぐりの森」を紹介してくれたことが大きな転機となりました。
そこには、「農園スーパー」といって、その日の収穫リストにそってお客さん自身で無農薬野菜の収穫をできるようになっており、そうすることで野菜と梱包などの資源の無駄をなくすことができる仕組みでした。そこに魅力を感じ、探していた場所に出会え子供とも頻繁に通うようになったそうです。当時農園側は人手が足りなかったこともあり、西村さんに誘いがかかりお手伝いをすることに。一年間の手伝いをお通して現場の大変さがみえてくると、こういった社会的にも有意義なものを経済的な問題で無くすのはもったいないと感じ始めます。もっと効率的に、持続可能にしていくにはどうしたらいいか、そういったことを農園の人たちとも考えていくようになっていき、私たちのために生産してくださっている農家さんの万人に届ける大変さ、その背景を伝えたいと思うようになったそうです。
西村さんは仕事として農園と関わるようになり、三浦半島、湘南エリアの無農薬・規格外を使用してバーニャカウダーなど瓶詰めのソースをつくり始め、さらに実際に継続的に農作業体験をするスクールも開き、人と農園を繋ぐ「ファームキャニング」を立ち上げました。そして約3年前に逗子に引っ越し、工房兼オフィスを構えます。

化学調味料や保存料などは一切使わず、ていねいに作られた食材を選んで作った「ベジバーニャ」。

将来は逗子をオーガニックタウンにすること

三浦半島では有機栽培が行われている農家はまだ少数で、昔ながらの大量生産の方法が多いと教えてくださいました。「新規就農の人は無農薬にチャレンジしていることが多く、そういう人をもっと応援したい、そしてもっと増えることで当たり前になると嬉しい。」と西村さんは語ります。
また、「最近は生産者さんなど中の人が外に向けて発信するようになり、良さがわかって貰える機会が増えている。まだまだ知られていない魅力を伝えるお手伝いが今後もできれば。」と話してくれました。

将来的なビジョンとして20 年かかるかもしれないが、まずは給食をオーガニック化したい

イタリア発祥の地域の食文化を守る団体「スローフード協会」に参加すると世界での取り組みに刺激を受けることに。例えば人口60万人のコペンハーゲンの 街で、20年かけて学校給食と病院食を約90% オーガニック化する目標を達成できたと知り、日本にももっと広がればと思ったといいます。
しかし残念ながらまだ日本の農地で有機JAS認証を得ている農地面積は0.5%しかなく、先進国の中でも圧倒的に低いとのこと。「ニーズが広がれば現状を変えれるはず」、そんな思いを胸に、三浦半島のおいしいものを通して食文化を守り、三浦半島の食を持続可能なものにすることを目指そうと、マグロ問屋さんや近隣の農園さんもメンバーとなり、スローフード三浦半島支部を立ち上げました。
現在はイベントなどを通して活動を続けています。オーガニックの夢を掲げる一方、逗子での農業はほぼゼロという現実もあり、地元の魅力をもっと活用できればと感じているそうです。

Eat Local 三浦半島の魅力にもっと気づいてほしい

すぐ隣に美味しい野菜を作っている農家さんがいるのに、スーパーで他県のものを選んでいる、そういったジレンマを強く感じるようになっていった西村さんは、地元にある美味しいものを地元の人に味わってもらう「eat local」が大切であると話します。今は瓶詰めという形で世に送り出しているが、瓶詰めだけにこだわっているわけではなく、一つの手法であり、自分の活動により生産者さんのことを知り直接買いに行ったと聞くと嬉しいと話し、広めていく方法を今後も考えていきたいといいます。
また、「野菜に限らず漁業など一次産業に携わる方々の生産を持続可能な形にしていくために、売ることだけを考えるのではなく、豊かな状態で土や海を次世代に残すことも重要。そして、生産者さんの事をもっと多くの人に知って欲しい。」と語っていただきました。そういった取組に関わる事で、人も豊かになり、食も豊かになり食を通じて社会貢献していくことが重要だという西村さん。「やりたいことが多すぎて歯痒い」と、とても強い思いが感じられました。